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 これまでの障害者施策には、もっとも差別や不利益を受けるリスクの高い女性が置かれている差別的実態を問題にする視点が欠落していたと言わざるを得ない――。政府の障がい者制度改革推進会議は、2010年12月にとりまとめた意見書の中で、そんな「反省」を表明した。

 背景には、障害女性に対する複合差別の存在を明記し、批准国に人権と基本的自由を平等に享有するための措置を求めた障害者権利条約が、08年に発効したことがあった。批准に向け、障害女性の困難に光が当たるかと思われた。

 10年の第3次男女共同参画基本計画は、障害のある女性などの「複合的困難」に初めて言及し、その後も引き継がれた。だが、11年改正の障害者基本法や13年成立の障害者差別解消法は、「性別」に応じた施策や合理的な配慮をうたうにとどまった。

 障害のある女性の困難は、14年の条約批准後も、障害者施策とジェンダー平等施策のはざまに落ちている。

複合的な困難が埋もれたままになっているのは、障害のある女性だけではありません。記事後半では、かき消されてきた声を響かせるための視点も紹介しています。

厚労省「男女別の報告、考えていない」

 象徴的なのが、障害者に関するジェンダー統計の乏しさだ。

 「障害者雇用促進法の下で雇…

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